【機械兵団の進軍】第6回 蘇る英雄たち【ストーリー】

2023年4月22日

はじめに

前回のストーリーで、新ファイレクシア次元での戦いは幕引きとなりました。

そして、ほとんどの英雄がザルファーへと帰ってこられたのです。

そう、ほとんどの英雄が。

テフェリーはこの勝利を祝いつつ、複雑な感情に揺れていたのでした…。

機械兵団の進軍メインストーリー、フィナーレです!

 

↓ストーリーのまとめはこちら↓

【機械兵団の進軍】背景ストーリーまとめ

 




目次

希望の種子

ザルファーに響き渡る、盛大な太鼓の音。そして歓喜の声。

テフェリーは彼らとともに勝利を祝う一方、喪ったものを悼んでいたのでした。

レンにふさわしい場所を探すこと二日間。

彼は草が生い茂り、街を見渡せる場所を選びます。

そしてその大地にドングリを埋めると、作り上げた小山の隣に座り溜息をついたのでした。

「私はこの時を数百年間待っていた。もう少し待たせても誰も傷つきはしないよ。それに、君には重ねて感謝を告げたかった。君がしてくれた全てに。それは……」

テフェリーは後頭部を手で撫でた。

「誤解しないでくれ。私は感謝しているんだ、今まで生きてきて一番、何よりも。けれどまた友を失うというのは、辛いんだよ」

(中略)

目の端を刺すような感覚があった。圧迫してくるものが。

少しの間、テフェリーは自らに涙を許した。テフェリー自身と失った年月への涙、カーンと彼が失った過去への涙、ニッサとアジャニへの涙、そしてファイレクシアが斃れても、目を覚まさないかもしれない者たちへの涙を。

そして何よりも、炎の傍での踊りに加われない者たちへの涙を。

涙が止まったのは真夜中のことだった。

 

テフェリーは治療院へと歩みを進めました。

外が歓喜の踊りで湧いている中。

この治療院には、死にゆく者の哀歌だけがあったのです。

中から聞こえる、プレインズウォーカーたちの相談の声。

その話題に上がっているのは、身体の金属を取り除いてもなお目を開けないニッサとアジャニ。

サヒーリは自身の推測を語りました。

何千人という人たちを完成化すべく、ノーンは油を介して信号のようなものを送っていた。

それはノーン以外には支配されぬよう、すべて彼女へと繋がっていたのだ。

そして、新ファイレクシアが虚空の彼方へ消えた今、油は不活性になったのではないかと。

「だから、ノーンがいなくなったなら……」

「油の影響を受けた者は、永遠に眠り続けるかもしれない」コスが言った。

「目覚めるかもしれない」

チャンドラが続けた。何よりも自分自身を納得させようとするかのように。

「一番いいのは待つことよ」

 

やがてテフェリーはメリーラへと視線を移します。

この場で最も傷ついている者。

彼女は弱々しく微笑むとカーンを呼ぶようテフェリーに伝え、続いてそのゴーレムへと自身の思いを語ったのでした。

二人を元に戻す方法があるかもしれない。

そして、その方法の断片はこの場に全て集まっていると。

「実行するなら、急がなければいけません。私も長くはもたないでしょう。簡単ではないでしょうし、代償も必要となります。それでも……皆さんに希望を持ってほしいのです。できる、と。そして、時が経ったなら、もっと易しい方法を誰かが見つけてくれるかもしれません。私やカーンを必要としない方法を。その希望が必要なのです」

テフェリーはうつむいた。

(中略)

メリーラは今夜を生き延びることはできないだろう。

けれど、ニッサとアジャニを救うことができるのなら……試す価値はあるかもしれない。この辛さを、ほんの少しだけ消すことができるかもしれない。

テフェリーは言った。

「詳しく聞かせてくれないか」




コスとエルズペス

神々しいエルズペスのその姿は、まだ見慣れない。

旧知の中であったコスは、ザルファーにたたずむ彼女にそう思ったのでした。

彼女とともに誰にも聞かれない場所までやって来たコスは、言葉に迷っていたのです。

天使になった理由、駆け付けてくれたことへの感謝、治療院の今の様子…。

今は話したいことが多すぎたのでした。

「助言を欲しているのですね」

エルズペスが言った。

唇に自然と笑みが浮かぶのをコスは感じた。

「そちらから切り出されるとはな。ああ、その通りだ。助言が欲しい」

彼女は笑みを返さなかったが、その表情には確かな柔らかさがあった。

「この姿には祝福があります。何に悩んでいるのですか?」

「メリーラの案は知っているか?」

その新たな祝福がどこまで届くのか、コスにはわからなかった。

「いいえ。ですがもう長くはないであろうということは知っています」

エルズペスは頭上、幾つもの太陽を見上げた。

「とても悲しい喪失です」

 

コスはエルズペスに説明します。

カーンが二人の灯を取り出し、ヴェンセールから受け継いだ自身の灯で濾過する。

それをメリーラが浄化し、カーンが二人へと戻すのだと。

そしてコスは自身の複雑な感情も感じていたのでした。

メリーラはきっと、この地で死にゆく最初の同胞となる。

そして彼女はその命を犠牲に、またカーンの灯までも使用して、ニッサとアジャニを蘇らそうとしている。

アジャニが救済に値するのかについては議論の余地がなく、きっと時間があれば彼はやり直せる。

しかし、その機会は死んでいったミラディン人には与えられていない。

納得するのは難しい、そうコスは感じていたのでした。

「怖いのですね」

心のどこかでは反論したかった――心の大部分が、そうではないと怒鳴っていた。だが彼女の言う通りだった。

「君は違うのか?」

彼女は再び太陽を見上げた。

「怖くはありません」

「メリーラは死にかけているんだぞ」

「彼女自身の選択でのことです」

エルズペスは答えた.

 

誰もが終わり方を選び、そして命を捧げるに値するものを持っている、そうエルズペスは続けます。

メリーラは自らの選択により、仲間とともに生き続けるのだと。

同胞を失い路頭に迷いかけているコスを、エルズペスは抱きとめつつ助言しました。

この地を故郷とすることはできる。

そしてこの地は、それを喜んで受け入れるだろうと。

「君は……君は変わったな」

彼はそう呟いた。

「ええ」返答は簡素な囁きだった。

「ですがコス、私はこの先もずっと貴方の友です。もし私を必要とした時は、ただ祈ってください」

(中略)

「ありがとう」

彼はエルズペスにそう告げた。心はまだ岩なだれを起こしていたが、少なくとも彼女は力になろうとしてくれた。

「どういたしまして。これからもお力になりますよ」




英雄の帰還

治療院から出て、平原へ眠る二人を横たえた一行。

やるまでわからない、しかしやる価値のある行い。

テフェリーの役割は、全員を包み込む「時の泡」を創り出すことでした。

それは、この中では最も簡単にして、失うものが少ないこと。

やがてカーンは二人へ手を突き出すと、揺らめき輝くものを取り出します。

銀のゴーレムの装甲から光が漏れ出た。月のように淡く輝く光が。

カーンは目を閉じた。

「始めましょうか、ヴェンセール」

自分自身だけに聞こえる小さな声で、彼は言った。

 

次いで、メリーラがその灯を浄化する。

それらがカーンの手に戻った時、ひとつは完璧なまま、ひとつは崩れかかった状態で揺らめいていたのでした。

ニッサの光球から灰のように落ちていく輝き。

とっさにケイヤが霊体の両手を差し出すと、彼女はカーンと力を合わせ、元の持ち主へとそれを返したのです。

テフェリーは呪文を解くと同時に膝をつき。

すぐ後に、アジャニは驚きとともに目を醒ましたのでした。

状況を詳しく説明する間もなく、アジャニは身体を休めるために眠りにつきます。

カーンはその大きな胸に手をあて、どさりと倒れこんだ。彼の内にあった光はぼやけていた――かすかに、赤と紫の残像が残るだけだった。

「大丈夫か?」

テフェリーが呼びかけた。

「まるで……独り残されたようです」カーンはそう言った。

「彼はもういません。寂しくなるでしょう。ですが、私はきっと大丈夫です」

コスはそうではなかった。彼はメリーラの隣にひざまずき、彼女の身体を膝に引き上げた。だが彼女もテフェリーと同じく、力を使い切った直後に倒れ込んでいた。コスの表情はありありと心配が浮かんでいたが、やがて悲しみに彼は目を閉じた。

「メリーラは死んだ」

ケイヤが彼の肩に手を置いた。

コスの頬を涙が伝った。

だが彼はそれを隠そうとはせず、また自らの苦悩を隠そうともしなかった。

 

カーンとともに彼へ手を回し、ともに涙に暮れるテフェリー。

その重苦しい悲嘆に、チャンドラも同調していたのでした。

アジャニの無事に対して、目を醒まさないニッサを揺さぶりながら。

希望を抱きすぎたのかもしれない。

テフェリーはそう感じます。

一生をかけたものでも、実を結ばないこともある。

壊れるほど切望したものを、手に入れる資格がないこともある。

それでも、時に……

「チャンドラ……?」

時に、試す価値はあるのだろう。

(中略)

チャンドラの張りつめた表情が純粋な喜びへと融ける。彼女はニッサを強く抱きしめ、ニッサが抱きしめ返す。悲しみの涙に、嬉し泣きの声が加わる……

これこそが命。このために誰もが戦い抜いた。このためにメリーラは死に、カーンは灯を捧げ、テフェリーは故郷を取り戻すために数百年を費やした。

このために。

「私はここにいる」

チャンドラはそう言い、ニッサへと唇を重ねた。

「ここにいるから、どこへも行かないから」

それでいい。

彼もまた、しばしの間は、どこへも行くことはないだろう。




今回はここまで

ちゅ、ちゅーしました!?!?

え?チャンドラチャン、ニッサチャンにちゅーしました!?

…とまぁまずはそこに驚くよね、ハイ。

リアルタイムで読んでいた時も、ここで「ブフォww」ってなりました。

ゆ、友情…?ですか…?

 

とはいえ…。

新ファイレクシア編、完!!

ニッサ、アジャニの復活とともに、カーンはその灯を失いプレインズウォーカーではなくなってしまいました。

意外とアッサリ戻ってしまったのは賛否両論ありそうですね。

これから推していこうと思っていたレンは離脱してしまったのに!!(涙)

まぁそんなこんなありつつ、今回のストーリーは非常に心理描写が丁寧で読みごたえがあります。

気になりましたら原文も!

そして次回はこの後日談が語られる、「機械兵団の進軍ー決戦の後に」が公開されます!

いったんはハッピーエンドとなったこのストーリーにて、どのような後日談が語られるのでしょうか!?

ここで、4月中旬現在すでに公開されているボックス絵を見てみましょう。

ニッサの髪ィ!

ナヒリ生きてんのかいィ!!

サルカンお前どっから出てきたァ!?!?

 

楽しみですね~(ニッコリ)

では、次回もお楽しみに!

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*出典*

メインストーリー第10話 命の律動