【コラム】戦乱のゼンディカーのギデオンが尊すぎる件
はじめに
さて、前回までで「MTG初心者にこそ知ってほしい、ゲートウォッチの誓い」シリーズと称して、戦乱のゼンディカー、そしてゲートウォッチの誓いのストーリーをご紹介しました。
いかがでしたか!?
私は灯争大戦で、これらプレインズウォーカーの活躍を知った初心者ですが、彼らの結束の原点はここにあるわけですよ。
サイコーですよね…!
ゲートウォッチの面々のこと、好きになっちゃいますよね!?!?
…と、いうことで。
今回はメインストーリー紹介とは全然別なお話をば…。
題して…
推せる!ゲートウォッチのキャラクターたち!
今回私が推したいのは、タイトルにもある通り…
ゲートウォッチの司令官、ギデオン・ジュラ!
彼のゲートウォッチ結成に至る活躍はここで紹介していますが、そのメインストーリーでは紹介しきれない彼の魅力を、今回紹介したいと思います。
誰よりも仲間を想うギデオン
まずは以前も触れたお話から。
エルドラージタイタンとの最終決戦にて、渾身の炎魔法を放つも、マナの不足により危機にさらされたチャンドラ。
その時に真っ先に駆け付けた人物は誰ですか!?
そうだね、ギデオンだね!
これこそが、ギデオンのギデオンたるゆえんです。
彼は誰よりも仲間を想い、仲間の危機に真っ先に駆け付けます。
これぞ正義の体現者ギデオン、という感じですよね。
彼でなくては、きっとゲートウォッチの誓いは生まれなかったのだろうと思わされます。
そして、彼のこの性質は、灯争大戦でも発揮されたのですよね…。
ボーラスに歯向かったことにより、呪われ破滅へと向かうリリアナの身体。
そこに、ためらうことなく、自分の命と引き換えに彼女を救ったのは誰ですか!?
そうだね、ギデオンだね!(血涙)
彼の仲間想いは、エルドラージ討伐後も発揮されており、前回の記事でもご紹介している通り、全力魔法と引き換えにうまく足が動かなくなったチャンドラを、誰よりも心配しているのがギデオンです。
こちらは、見舞いに来たギデオンに対する、チャンドラ視点のお話。
彼はわざとらしく、彼女を見下ろさずに言った。「脚の具合はどうだ?」
「んーっ」 彼女はうなり、思わず両膝へと触れた。
両足の感覚は僅かで、まだ完全に自分のものでないように思えた。彼女は足で地面を叩き、それらが動くことを示してみせた。
「感覚は戻ってきてる。治療師は何かすごく大きな呪文のせいだって言ってた――身体の機能まで全部使い果たしちゃったらしくて。二、三日すれば回復するだろうって言われたけど、何時間かすれば大丈夫だと思う。踊りたくってしょうがないわ」
一瞬、ギデオンの眉が歪んだ。その仕草を彼は完全に隠せなかった。
この男はまるで肌着のように心配を身にまとっている、その強さと鋼の下に隠して。
最後の一文。
ギデオンの仲間想いの性質を最高に言い表した一文だなって思うわけですね。
こんだけの人格者であれば、皆からも慕われようし、死後故郷に彫像も立つわいな。
※そしてファンのお兄ちゃんもカード化されるわいな
感化されるジェイス
どんどん行きましょう。
戦乱のゼンディカー序盤では、割と他人同士のゲートウォッチメンバー。
その中でも、ギデオンの能力に魅せられる描写が多いのが、ジェイスになります。
まず出会いたてのころ。
ゼンディカーからラヴニカへ飛んでき、ジェイスの助力を請うギデオン。
リリアナとのデート中だったジェイスの対応がこちら。
「今は勤務時間外です」 ジェイスは言った。
プレインズウォーカーであろうとなかろうと、この男の揉め事はジェイスが解決するものではない。
「朝になりましたらギルドパクト調査に行き、予定表に記入をして、数日のうちに――」
「ゼンディカーという地の件です」 その男が言った。
リリアナは釘を飲み込んだような表情をした。
「お客様」 ヴァルコが言った。「お仕事が何であろうと、当店の規定としてお客様の服装は容認できるものではありません。私は断固として――」
「いや、ここにいてくれていい」 ジェイスが言った。
「もし見た目が問題なら、私がこの卓全体に不可視の呪文をかける」
「それは」 ヴァルコが言った。「食事を運ぶことが著しく困難になりますが」
「どのみち匂いは隠せないし」 リリアナが言った。
※勇者ギデオン(くさい)
なかなかな塩対応。
これが、ギデオンに同行することになり、彼の献身とカリスマ性に触れるうち、ジェイスの中でのギデオン評価がグングン上がってきます。
野営地にたどり着いたギデオン達は、面晶体の謎の鍵を握るジョリー・エンがその場にいないことに気づきます。
もちろん、ギデオンは自分が率先して彼女を探しに行くことを進言します。
そして、ギデオンを失うことを恐れるジェイスと口論になるのでした。
以下、ギデオンのセリフから。
「もし貴方とジョリー・エンが謎を解かなければ、全てが無に帰す」
「エルドラージだらけの街で彼女を探そうとしてあなたが死んだなら、全てが無に帰す」
「ジェイス」ギデオンは片手をその精神魔道士の肩に置いた。
「今日私達がやり遂げたことを見ろ。もっと大きな行いが私達両方の前に横たわっている。私を信じろ」
ジェイスは彼の手の下で悶え、一歩後ずさって離れ、視線を合わせた。彼は口を開きかけて止まった。
「私を信頼してくれ」 ギデオンはもう一度言った。
「そうする」 ジェイスは言った。その声にはわずかな疑問があった。
「まだ、馬鹿げたことだとは思ってるけれど、信じるよ」
「感謝する。できる限り早く戻る」
「きっと、やってくれるって信じてるよ」 ジェイスは言った。「幸運を」
「私を信じろ」=真のイケメンのみに許された殺し文句。
そして、本編でもご紹介しましたが、ジェイスはギデオンの一声に、知らぬ間に鼓舞されている自分にも気づきます。
「了解!」
その言葉は部屋に響き、ジェイスは自分の声がそこに加わっているのを聞くまでその事に気付かなかった。
彼はそれに驚かされた。
ギデオンが自分を驚かせたのだ。
空岩で離れて以来、このプレインズウォーカーは指導者としてとても成長したようだった。
このあたりで、ジェイスはギデオンを指導者として認めていますね。
そして、彼のカリスマを目の当たりにしたジェイスは、いざ自分が指揮を取る段においても、彼の姿を思い浮かべます。
これも、本編でご紹介した通りですね。
『ギデオンならば何と言うだろう?』
ジェイスは微笑んだ。決まってるよな。
「ゼンディカーのために!」 彼はその言葉とともに、拳一つを宙に掲げた。それはギデオンの逞しい拳ではなく、響き渡る戦鬨でもなく、鉄の信念もなく、ジェイスには薄く感じられた。
その何も問題ではなかった。兵士達は武器を高く掲げ、声を合わせて叫んだ。
「ゼンディカーのために!」
極めつけは、ウラモグとコジレックを討伐し、平和の訪れたあと。
ジェイスは、消耗しているチャンドラに話しかけるギデオンを見ながら、そのカリスマについての考察をします。
今や彼女はギデオンを温かく迎えていたが、ジェイスについては今も疑念を持って見ていた。
それはもしかしたらギデオンの魔法によるものかもしれない、だがジェイスはそうは思わなかった。
(中略)
彼が行くところ全てに、安堵と希望が根付いた。それこそが統率力。
ジェイスは疑問に思った、それは他の皆に対してのように、自分にも通用するのだろうかと。
ジェイスはその効果をテレパスで再現できる筈だった。
人々の思考へと働きかけて適切な事を言う、もしくは慰めと安楽を与える。人々に自分を信頼させる。
だが誰もが知っているように、ギデオンはテレパスではない。ギデオンはただ、何を言うべきかを知っていた。
自分のように精神魔法が使えるわけでもないギデオンの、魔法にも思える統率力は、果たして自分にも通用するのか、と。
これは、ストーリーの最後で回収されます。
ジェイスが、次なる目的のため、イニストラードへ向かうことをギデオンに告げたシーン。
ギデオンはゆっくりと頷いた。
「君の決定を信じる。いつ出発できる?」 ジェイスの目を見て彼は尋ねた。
「今日だ。物資を集めてソリンについての知識を得て、そうしたら出発する」
「わかった。私達はここで待とう」
彼は立ち上がり、通常、誰かに命令を与えた後のように肩を叩くことはせず、歩き去った。
誰かに命令する……ジェイスは命令された気はしなかった。ただ単に――
ちくしょう。
ジェイスは思った、
俺にも通用するじゃないか。
嗚呼…尊きジェイスとギデオンのやり取り…!
この正体の説明できないカリスマこそが、ギデオン最大の魅力の一つです。
タズリとの絆
さて、最後はこれです。
本来は戦乱のゼンディカーでは欠かせないドラマなのですが、本編で泣く泣くカットしたお話です。
ゼンディカー人であり、当時の将軍ヴォリクの副官であったタズリは、唐突に現れたギデオンに対し不信感がぬぐえません。
「司令官はあなたがそのように時間を浪費することを望んではおられません」
タズリの声が背後から聞こえた。彼女はヴォリクの天幕から出てきたに違いなかった。
(中略)
脱出行の中、ヴォリクが彼女ではなくギデオンの提案を受け入れて以来、タズリはギデオンへと冷淡な態度をとり続けていた。
浮遊する面晶体の上へ生存者達を避難させるというのはギデオンの案だった。
タズリは彼らを歩かせ、更に遠くへ避難させたがっていた。
自分がとった行動は正しいとギデオンは今も信じていた。
そして彼はもはやタズリとの議論ではなく、彼女の信頼を得ることを望んでいた。
最後までストーリーをご覧になった皆さまからすれば、どうした!?ってくらいの疎遠な関係。
タズリは、ゼンディカー人でもないギデオンが、この次元と人々を守れるわけがないと決めつけているわけです。
そして、この二人が激突してしまうのが、部隊の進退を決める瞬間でした。
海門の奪還を提案するギデオン。
対してタズリは、それは自殺行為だと、皆を避難させるためズーラポートへと移動すべきだと彼を非難します。
二人は、死に瀕した司令官ヴォリクの前で、口論を始めるのでした。
「蹂躙されたのは海門だけではありません。エルドラージの群れは何もかもを奪い去ります。あらゆる所にいます。私自身この目で見てきました。もし今行動しなければ、戦わなければ、この世界は失われるでしょう。何もかもが、誰もが、失われるでしょう」
タズリの燃え上がるような瞳がギデオンを貫いた。
「あなた以外は。あなたはただ去ればいいのだから」
ギデオンは彼女の非難に面食らい、まばたきをした。
「いいかげんにしろ!」
だが言い返すよりも早く、ヴォリクの声が響いた。
一瞬、その声は司令官の体力が戻ったかのように、彼が戦場で命令を叫んでいるように響いた。
「私の周りで言い争いをするな、下がれ。全く。この老いた、死にゆく男に息をさせてくれ」
彼は癒し手達へと言った。「君達の任務は終わりだ」
彼は三人へと頷いた。その視線は定かだった。
「これまでの行いに感謝する、だが終わりだ」彼は癒し手達から視線を移した。
「タズリ、ギデオン。来てくれ。時間がない」
ヴォリク司令官の告げた言葉。
結果として、遺言になってしまう彼の言葉。
「二人は口論をしている場合ではない」ということ。
「今こそ互いが互いの言葉に耳を傾けるのだ」ということ。
そして、ヴォリク自身が自分の死に対し感じていた、この世界から逃れられる安堵と、自責の念。
「海門を」 ヴォリクはそう言って、頭上高く指を立て、そしてギデオンへと向けた。
「皆に必要なのは、鼓舞してくれる者だ。君が私を鼓舞してくれたように。彼らは希望を求めている、私が持ったように。彼らには指導者が必要だ、状況に関わらず勝利への道を知るような。私が死んだなら、君が皆を率いてくれ。海門を取り戻せ、ジュラ司令官」
「閣下」 ギデオンはよろめいた。その地位は……
(中略)
「いけません、閣下」 タズリが言った。「彼はゼンディカー人ですらありません」
ヴォリクは再び咳こんだ。きつく、激しい咳で硬貨ほどの大きさの荒廃の塊が吐き出された。彼は苦しく息をしながらかぶりを振った。
「タズリ、彼が何処から来たかは問題ではない。この男にはゼンディカーの不屈の魂がある」 ヴォリクはギデオンへと手を伸ばした。
ギデオンはその逞しい指で、司令官の萎れた手を包んだ。
「その心を失わないでくれ。この世界を失わないでくれ」
「失わせはしません、閣下」 ギデオンは誓うように言った。
「ギデオン、君にゼンディカーを任せる」
その言葉は彼を内から引き裂くほどの咳と化した。
ヴォリクの身体は激しく震え、そしてギデオンの手の中で彼の手は力を失った。
ヴォリク将軍の葬送を終えた夜明け。
ギデオンは、部隊に向けて演説を行います。
ズーラポートへの避難は、たしかにできる。
しかし、それはいずれ海門と同じように、破滅の道へとつながるであろう。
だから、打って出るのだと。
攻めに転じるのだと。
彼はスーラを空へ向けて振るい、放った。「ゼンディカーを取り戻す!」
彼は順々に、集まったゼンディカー人を見た。「私と共に来る者は?」
長い沈黙の後、セーブルが拳を振り上げた。「ゼンディカーの為に!」
「ゼンディカーの為に!」 アビーナが声を上げて加わった。
群衆から歓声が上がり、その声は力となって全員が立つ面晶体そのものを震わせた。「ゼンディカーの為に!」
ギデオンはタズリを見た。彼女はすぐ隣に、腕を組んで立っていた。
「私は去ることはありません」 ギデオンは誓いを立てるように言った。「最後の時まで、ここにいます」
タズリは彼のまっすぐな視線と目を合わせた。
「私の言葉を覚えておいて下さい」彼は言った。「私はゼンディカーの為に戦います」
タズリの首回りの環が鮮やかに輝き、彼女の目から零れ落ちたものをその光が受け止めた。彼女は頷いた。
「ゼンディカーのために。私も戦います、司令官」
戦乱のゼンディカー、完。
わかります?
このやり取りがあってから、すべてが終わって、二人の早朝ランニングがあるのですよ!!
ここで、ギデオンはついに「ゼンディカーを離れる」ことになり、この後ゼンディカーを守っていくタズリを「司令官」と呼ぶようになるのですよ!!
嗚呼…尊い…。
今回はここまで
そんなわけで、今回は戦乱のゼンディカーのストーリーを愛する私が、ギデオンの推しポイントを語ってみました。
もうね、書けば書くほど。
「惜しい人を亡くした…。」
という気持ちしか沸かない。
いやほんと
土下座をするのだボーラス!!!!
さて、ひたすら私が思いを語りまくったところで。
戦乱のゼンディカーブロックはいったんおしまいにしようかと思ってます。
次回からはイニストラード、やるぞー!!
お楽しみに!!!
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