【Φ完全なる統一】第7回 テゼレットの逃走【ストーリー】

2023年3月8日

はじめに

前回までで、「完全なる統一」のメインストーリーをご紹介しました。

本線は新ファイレクシアの侵攻を止めるべく奮闘する英雄たちのお話でしたが。

これからご紹介するのは、そんな本線とは異なる「サイドストーリー」。

今回は、表面上ファイレクシアに肩入れしているテゼレットの物語をご紹介します。

一応、”兄弟戦争”現代軸からの続きモノなので、ご覧になっていない方はそちらからどーぞ!

【兄弟戦争】第3回 エルズペスの戦い【ストーリー】

 

↓ストーリーのまとめはこちら↓

【Φ完全なる統一】背景ストーリーまとめ





目次

ノーンとテゼレット

ドミナリアにて深手を負ったローナを両腕に抱え、新ファイレクシアへと降り立ったテゼレット。

機械の母へ会う必要があると吼える彼へ、当のエリシュ・ノーンはローナをギタクシアスの元へ、そしてテゼレットは自分の元へ来るよう天から伝えたのでした。

彼女の玉座へ向かい、その元へひざまずいたテゼレットは、ノーンによる糾弾を受けます。

万全の兵がいたにも関わらず、なぜドミナリアを放棄したのかと。

「いかにも、母よ。だが…… 裏切り者がいた。私が連れて来たローナ――」

「シェオルドレッドの下僕の一体か」

エリシュ・ノーンの声には判決を下すような響きがあった。彼女は玉座から立ち上がり、階段を下り始めた。

「シェオルドレッド、我らが眼前の背教者め!あの者の軍勢は権力を把握しようと、無謀にも我らに楯突いた。族長どもの過去の罪に対する我らの慈悲を嘲るように…… 何という苦痛、何という冒涜」

 

テゼレットはその言動にひどく驚きます。

ドミナリアでの出来事から想像もできない、シェオルドレッドの裏切り。

しかしそれは、テゼレットの「言い訳」に思いがけぬ信憑性をもたらしたのでした。

彼は報告を続けます。

プレインズウォーカーの指揮官として、新たな武器でローナを倒した女性がいたと。

その者の名は、エルズペス・ティレル。

テゼレットによって放たれた名前により、戦慄の表情を浮かべるノーン。

その武器は新ファイレクシアをも滅ぼしかねない、とテゼレットは追い打ちをかけます。

怒りをあらわにし、その対策をすると宣言するノーンに対し、次元橋の苦痛に膝をつくテゼレットは交渉したのでした。

約束の褒章をもらえれば、自分は脅威の盾になると。

「かのような重荷を我らのために」

エリシュ・ノーンの鉤爪が彼の頬を撫でた。

「其方の信頼に報いる時が来た。約束は果たそう」

そして彼が意識を失う寸前に見たのは、嫌気がさすほどに傲慢なエリシュ・ノーンの笑みだった。

 




テゼレットの求めたもの

目覚めたのは、手術の準備が済んだジン=ギタクシアスの研究室。

そして彼はそこで、目的のものを目にしたのでした。

ダークスティールの身体。

冷たく、不滅にして、無敵のもの。

すぐにギタクシアスの手術は開始されます。

元の身体にあったエーテリウムは、新たな身体を繋ぐための糸となり。

頭部と脊柱を外されたテゼレットは、ダークスティールの身体へと移植されたのでした。

途方もない痛みから目を醒ました彼が感じたのは、ここ数か月感じていなかった明晰さと力強さ。

「腕を上げたな」

テゼレットはそう言った。

「それは違う」

ジン=ギタクシアスが答えた。

「この強化は十分に私の能力の範囲内だ」

「いずれにせよ、お前の技術は素直に称賛できるものだ」

そう、お前の胸糞悪い次元とその全てに対する軽蔑と同じほど素直に。そして再鍛されたひとりの人間として、彼は久遠の闇へ旅立とうと試みた。

 

しかし、テゼレットは気づきます。

プレインズウォークができないどころか、四肢すら動かせないことに。

解放を要求し叫ぶ彼を無視し、ギタクシアスは説明しました。

ダークスティールを荒廃鋼に転化するためには、数週間ぎらつく油にさらす必要があると。

執刀の球体から露になる新型の現実チップと、水槽にいたウラブラスクの屑鉄隊長。

テゼレットは全てを察します。

ジン=ギタクシアスはウラブラスクの裏切りも知っていたのだ。

そして自身が玉座へと昇り詰めるために、それらを泳がしていたのだと。

再びテゼレットは拘束の破壊を試み、可能な限りあらゆる方角に向けて呪文を唱えた。だが呪文が完成する度に大理石の台に波打つ金属が反応し、銀色から眩しい乳白色へと変化して彼が逃走するためのエネルギーを吸い上げた。それでも彼は呪文を唱え続けた。この減衰の場を貫く可能性のあるものは何であろうと、必死に。

そして何かが貫いた。

プレインズウォーカー。

呼びかける声が聞こえた。疲弊して消えかけてはいるが、ファイレクシアの炉の熱とともに沸き立つ声。

どうやって私の心に届かせた?

 

それは、エスパー次元にいた際に習得していた精神操作の類。

彼は呼びかけられた水槽の屑鉄隊長へと精神的つながりを確立すると、彼を操作し、ジン=ギタクシアスへと攻撃させます。

そしてその隙に自身を縛るものたちを破壊すると。

屑鉄隊長を始末し終え、現実チップを手に迫るギタクシアスを尻目に、テゼレットはプレインズウォークをしたのでした。

 




故郷にて

不浄、暗闇、荒廃。

エスパー次元、潮の虚ろ。

テゼレットが次元渡りしたのは、彼の故郷、生家の前。

到着するなり彼を強襲してきた追いはぎの少年たちを撃退すると、テゼレットはその中の一人であったエステルと名乗る少年を連れ、板張りの家へと入ります。

そしてその光景は、彼に過去のことを思い起こさせたのでした。

最下民であった父は今や行方不明となり。

過去には施しを求めた母が、裕福な者の馬車に轢き殺された。

求道者となったテゼレットがそれに復讐しようとしたとき、何年も前にその男は愛する家族囲まれて死んでいた。

貧民街の日常、みじめな記憶。

「これが何だかわかるか?」

テゼレットは箱を開け、エステルへと中を見せて尋ねた。あらゆる形状の金属片――塊、削り屑、不揃いの糸が入っていた。

「エーテリウム」

プレインズウォーカーの視線に震えながら、エステルは答えた。

「このほんの少しだけで、潮の虚ろの住人全員以上の価値がある。今の、あるいは未来のお前たちを合わせた以上の」

 

彼はエーテリウムの薄板へ一つの伝言を記します。

それを立方体へしまい込み、少年へ手渡そうとしたとき。

雷鳴とともに、昆虫のような生物ーファイレクシアたちが街路へ降り立ったのでした。

その早すぎる到着に顔をしかめつつ、テゼレットは少年へ急ぎ伝えます。

バントへ行き、将軍騎士のラフィークという者にこの箱を渡せと。

「何が起こってるんです?あれは何なんです?あなたは一体?」

「私は、お前に生きる機会を与えている者だ。ラフィークに会ったなら、エルズペス・ティレルの仲間に送り込まれたと言え」

テゼレットはエステルを押しやり。少年は立ち去ろうと背を向けた。だが小屋から退出する直前、彼は振り返ると頷いて言った。

「ありがとうございます」

「言葉の無駄だ」

そう吐き捨てながら、目頭が熱くなるのを感じた。

「けど旦那様――」

「いいから行け!」

テゼレットは叫び、エステルを出て行かせた。

 




神河次元にて

アランズール、イルセー、オブシディアス、ミランカール、カブレラン…。

彼が避難しようとした次元は、全てファイレクシアの手が及び、機械の軍勢に敗北していたのでした。

不本意ながら彼が逃走先に思いついたのは、神河次元。

自らがお尋ね者となった次元にて隠れ家へと急ぐ彼は、その道中にて何者かに呼び止められ、刃による急襲を受けたのでした。

そこに現われたのは、一人の鼠人。

「あの人はどこだ?」

テゼレットはうめき声をあげ、プレインズウォークを試みた。だが心はあまりに乱れ、逃げることも呪文を唱えることもできなかった。

(中略)

「タミヨウさんは」その鼠人は続けた。

「あの人はどこにいる。言え」

彼は制御ロッドを掲げ、ドローンを降下させた。

「…… 死んだのか?」

カチリと音を立て、テゼレットの頭部に向けられた砲塔に次の弾が装填された。

「言え、今すぐだ!」

タミヨウは母であったと告げた鼠人ーナシ。

母への復讐のために砲塔を突きつける彼でしたが、その引き金は引けないままでいたのでした。

テゼレットはその様子に、激情を弾けさせます。

「惨めな弱虫が!」

テゼレットは能力の制御を取り戻し、片腕でナシを持ち上げて橋の支柱へと投げつけた。

「運命はお前に復讐の機会を与えた。それをお前は無駄にした!その機会を得られる者がどれほどいると思っている!」

(中略)

「受けるに足るものを手に入れて生きろ!お前を止めようとする奴はいるだろうが、先にそいつらを止めろ!そいつらをまず殺せ!」

 

やがて神河の鼠人たちに囲まれるテゼレット。

しかし周囲の機械たちを操ると、彼はいとも簡単にそれらを排除したのでした。

テゼレットはナシへと告げます。

お前の母は生きている。すぐにお前のもとに来るだろうと。

そしてその時、母は殺されていた方がマシだったと思うだろうと。

 

その場を離れたテゼレットは、神河の隠れ家で装備や調達し、次元渡りをしました。

名もなき、さびれた次元へと。

無限連合の時代に彼が拠点としていた場所。

「これを私から隠していたとは。賢明だな、ベレレンよ」

テゼレットは独り呟いた。

「だがもはや違う」

徒歩で向かいながら、テゼレットは他の次元で起こりつつある戦いについて考えた――ベレレンとその仲間たちがエリシュ・ノーンに立ち向かう。それらはまもなく終わりへと、両者が互いに最後の一斉攻撃を放つ段階に到達するだろう。

(中略)

いずれどちらかが勝利し、だが弱体化する。その時――その時初めて――自分は行動に移る。

それまでは、やるべきことが沢山あるのだ。

 




今回はここまで

おや?なんか今回のテゼレットはカッコいいぞ?(;´・ω・)

何かしらの野望のために、しぶしぶエリシュ・ノーンに従っている感じを醸し出していた彼でしたが、求めていたダークスティールの身体を正式に手に入れ、かつファイレクシアの手から逃げ伸びました。

そして、バントのラフィークに何かを託し、無限連合時代の何かを手に入れたようで…?

なんかめちゃくちゃ伏線を張ってきますね?

彼は英雄やファイレクシア、どちらにも与することなく自身の野望のために備えるそうです。

こういうキャラが、意外なところで意外な活躍をするのがオモシロいところありますが、果たして…?!

 

さて、テゼレットのストーリーはいったんここまで!

次回は、サイドストーリーで語られたテフェリーのストーリーをご紹介!

お楽しみに!

 

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*出典*

サイドストーリー第4話:働きもの