【破滅の刻】第5回 王神の帰還【ストーリー】
はじめに
アモンケットに訪れた刻のはじまり。
最初に犠牲となったロナスに続き、ケフネト、そしてオケチラもが蠍の神の毒牙にかかり斃れて行ったのでした。
残されたのは熱烈の神ハゾレトと栄光の神バントゥのみ。
崩壊する都市の中で戦う神のもとに、ついに王神がその姿を現します…。
王神の帰還
ハゾレト神は絶望に膝をつきます。
ヘクマの防壁の守り手は斃れた。
悪を貫く矢の使い手は斃れた。
兄弟姉妹でも最強の、砂漠の監視者は斃れた。
ハゾレトは神の怒りを解放し、砂漠からの侵入者と戦います。
王神が帰還するまでは、斃れてはいけないと。
その神の元へ、サムトとデジェルが現れたのでした。
王神の欺瞞に気づき、それをいち早く唱えていた少女が。
ハゾレトは溜息をつき、わずかに心を和らげた。そして膝をつき、サムトを貫くように見つめた。
「サムト、其方は強い。力も意志も。その強さをもって友を守るがよい。アモンケットは其方を必要としている。そしてデジェル、我が最後の勇者よ、其方もだ」
サンドワームの恐ろしい咆哮が遠くでハゾレトの注意を惹いた。神は武器を構え、立ち上がった。
「仰せのままに、ハゾレト様。兄弟姉妹を守ります」
デジェルの声は明瞭で確固としていた。だがサムトは神を見つめ、その目には今も疑念が踊っていた。
「ハゾレト様のことは、誰がお守りするのですか?」彼女は尋ねた。
小さな笑みがハゾレトの顔に閃いた。
「行け。戦うのだ。私は耐えよう」
他の神と同じく、ハゾレト神もこの状況が理解できないでいます。
残る定命を試す栄光の刻は、生者を餌とするものに変わっている。
それらは、試練に臨むには幼すぎる子どもたち。
神の頭の中には、常に絶望と祈りの声が渦巻いていたのでした。
だからこそ、ハゾレトも祈ります。
王神の帰還を。
王神こそが、この無秩序を秩序ある状態へと戻してくれることを。
すると、その祈りが届くかのように。
空を裂くようにして、しなやかなるドラゴンが、その姿を現したのでした。
王神が、ついに帰還したのです。
栄光の神の裏切り
ハゾレトは歓喜に両腕を上げます。
神の心の中に渦巻いていた定命たちの声は、悲鳴から安堵の声に変わりました。
王神は玉座に座し、世界の惨状を一瞥して…。
笑みを浮かべたのでした
恐怖がハゾレトの身体に溢れた。
安堵と喜びと高揚をその足跡に響かせて定命がそのドラゴンへと殺到する中、ロナスの最期の言葉が心に反響した。王神は彼らを見下ろし、鉤爪の手を掲げ、ハゾレトは大気にエネルギーが満ちるのを感じた。
紫色の火花がその鉤爪の間に弾け、そして空から黒い炎が降り注ぎ、触れる全てを食い尽くした。
天から降り注いだ破壊に、定命の歓喜は悲鳴へと変わった。
すぐ側の定命らをかばおうとハゾレトは駆け、自らの身体で彼らを破壊の術から守った。槍を回して彼女は渦巻く砂と炎の盾を作り出し、歯を食いしばって王神の呪文を耐えた。
帰還した王神は、破壊の限りを尽くしている。
その理由を探るハゾレトは過去を思い出そうとしますが、その記憶に蓋がされていることに気づきました。
その渦中で、耳に飛び込んできたのは別の神の声。
「アモンケットの王神、ニコル・ボーラス様万歳!」
(中略)
「ニコル・ボーラス様。私は貴方様のもの。生きてお仕え致します。ご命令を、さすれば遂行致します」
バントゥの言葉に、ハゾレトの両手が槍を更に強く握りしめた。これ以上はもう抑えられなかった。
「バントゥ!」 彼女は叫んだ。「どういうことだ!?」
ドラゴンと神が彼女を見た。そして存在して初めて、ハゾレトは自身を小さく感じた。
王神はバントゥへ視線を戻し、口を開いた。
「同胞を殺せ」
躊躇なく、バントゥは両手を掲げて黒いエネルギーをハゾレトへと放った。
バントゥの放った呪文がハゾレトへと直撃した瞬間。
精神を襲われた感覚とともに、彼女はすべてを思い出したのでした。
ボーラスの欺瞞。
そして、バントゥの計画された裏切り。
「何故だ、バントゥ!」
バントゥは笑った。かすれた、耳障りな音だった。定命の耳には、それは残酷で確信に満ちたものに響いた。だがハゾレトには、悲しみに染まった絶望として届いた。
「私が何者かを忘れてしまったのか? 私は野望の化身。ボーラス様は背く者全てを殺す。私はそうではなく、その力に加わることを選んだ。生き延びることを選んだだけだ」
(中略)
「ボーラス様こそ世界」
バントゥは杖を突きつけ、すると屍術の黒色を帯びて炎がハゾレトへと爆発した。
「そして貴女に価値はない」
鰐頭の神は、怪物を召喚すると、あろうことか定命の子どもにそれを向けたのでした。
人間を守るために動くハゾレト。
その隙をついて、バントゥは彼女に魔術を放つと、崩れ落ちた神を引きずって玉座へと歩き出したのです。
「王神様、仰せの通りに致しました。この身をもってお仕え致します」
大いなるドラゴンは服従に膝をつくその神を見下ろした。ゆっくりと彼は片手の鉤爪を上げ――
そしてバントゥへと暗黒のエネルギーを放った。
神は地面に崩れ、苦痛に悶えた。
「貴様は用済みだ。死して役立つがよい、弱き神よ」 それは冷笑だった。
瀕死の二柱を残し、ニコル・ボーラスは踏み出した。
苦痛に倒れたバントゥの体は、無数のアンデッドに襲われその姿を消します。
バントゥは最後の力を解放すると、それらの力は生者と死者を巻き込んで破滅させ…
そして、4柱目の神がアモンケットの地に斃れたのでした。
抗う定命たち
サムトが感じたのは、今日何度目になるかわからない心臓の痛み。
すでにアモンケット五柱の神のうち、一柱を残して全員が斃れた。
彼女は、王神の裏切りを察して絶望する生存者たちを隠れ家にかくまうと、呼びかけます。
自分たちは、自分たちの信じた神のために戦うのだと。
そして、それに同意する声が一つ。
「私も共に戦おう」
サムトは顔を向け、驚き、感激に胸が締め付けられた。年少の生存者を慰めていたデジェルが立ち上がり、皆へ顔を向けた。
「サムトは私の最も古い友人だ。王神に背く発言をはじめて聞いた時、彼女の言葉は穢れた異説だと、誰よりも思った。だが彼女の言うことは真実なのだと、信じる必要がある以上に、わかっている」
鼓舞された群衆の顔からは、それでもとまどいは消えません。
圧倒的な力を誇る王神に、自分たちは何ができるのかと。
サムトはそんな人々に告げるのでした。
それは生き延びることだと。
生きることこそ、神の願いであると。
そして、その意志のあるもののみ、自分たちとともに街へ戻り、神を守るために戦ってほしいと。
彼女は他へ向き直り、一本の刃を宙に掲げた。
「戦う者らよ、私に続け! 残された神を見つけ、守ろう!」
今回はここまで
野望の試練あたりから「えぇ…」って感じだったバントゥ神、結局「えぇ…」のまま終わるの巻。
それはそれとして、王神の教えを信じ込み、サムトの言説を否定し続けたデジェルが、ここでサムトの味方につく展開はアツいですね!
破滅の刻で収録されたデジェルは、その名の通り「目を開いた者、デジェル」という名前になっています。
能力も、のちにプレインズウォーカーとして覚醒するサムトと共闘するかのようなものになっていますね!
警戒
目を開いた者、デジェルが戦場に出たとき、あなたはあなたのライブラリーからプレインズウォーカー・カード1枚を探してもよい。そうしたなら、それを公開してあなたの手札に加え、その後あなたのライブラリーを切り直す。
発生源1つがあなたがコントロールするプレインズウォーカーにダメージを与えるなら、そのダメージを1点軽減する。
さて、次回はそんなサムトの奮闘と、残された神ハゾレトの行方について!
お楽しみに!
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