【ニューカペナの街角】第6回 エリシュ・ノーンの悪夢【ストーリー】
はじめに
ニューカペナのストーリーは、祝祭クレッシェンドを舞台にエルズペスとビビアンが縦横無尽に活躍して終わり!!
…だと思っていたら!
その終幕から1か月後、しれっと追加されるストーリー。
それは、新ファイレクシアの法務官エリシュ・ノーンのお話。
そして、ニューカペナのストーリーにてウラブラスクが、なぜ「エリシュ・ノーンはエルズペスを恐れている」と称したのか、そんな伏線が回収されるお話…。
いつも通り、あらすじをご紹介いたしましょう。
↓ストーリーのまとめはこちら↓
機械聖典にて
ファイレクシア白の派閥、機械聖典。
その統治者にして、機械の母エリシュ・ノーン。
彼女が見渡す目線の先には、彼女の創り上げた完成品たちがいたのでした。
美麗聖堂、白磁の尖塔、そしてファイレクシアの忠臣。
誰も否定できない美。完全にして絶対の真実。
演説を行う彼女の手元には、抵抗を続けるミラディン人が。
それは不完全のもの。弱きもの。
ノーンは声を上げた。
「この不完全なる生物をとくと見よ。この有機体の異形であっても、聖典の慈悲に値する。祝福すら与えられよう」
(中略)
ノーンは手に力を込めた。
「まもなく、この惨めな人間は恐怖という重荷から解放される。皮を剥ぎ、この弱き身体に拘束する肉を取り払う。そして、この女もまた、完全な同一意識をもって我らの神聖なる目的と意志に加わるであろう」
一瞬、煙で曇ったかのように暗くなる空。
しかしそんなことには気を留めないノーンは、自身の手首を切り裂くと、そのぎらつく油をミラディン人へと滴らせたのでした。
傷口や眼窩から浸食し、すぐに身体を支配する油。
ノーンがそれを全員に見せるように掲げた時。
不意に、予期せぬ形で、まるでノーンに抵抗するかのように。
ミラディン人はうねり、悶え、その身体からは有機的な木の根が生え、弾け続けたのでした。
あまりの当惑に、エリシュ・ノーンは反応するまでに一瞬を要した。
(中略)
「この見せしめの証人となり、憐れむがよい」
穏やかな声、だが心はぐらついていた。今この時何が起こったのか、あらゆる可能性を、あらゆる説明を照合した。
「何という堕落の器、我らがぎらつく油ですら救えぬとは。これこそ、我らが教義を速やかに広めねばならぬ理由である。全てのものを救うために」
だがそう言いながらも、ノーンは必死に心を落ち着かせようとしていた。
何もかもがありえない。理にかなっていない。
ぎらつく油が失敗するなど、ありうるはずがないのだ。
肉の庭
心中穏やかでないままに、庭園へと戻ったノーン。
その思考は、今しがた起こったことを説明すべく躍起になっていたのでした。
見たこともない現象。そして、予測可能であったものから生まれた予測不可能なもの。
ふと、彼女の目は庭に生えた小さな草に奪われます。
無機的な世界における、不浄な有機体。
不快感のままにその植物を排斥しようとしたノーン。
しかし、その草は彼女の手を逃れるように滑り、抜き取ろうとすれば地面に張り付くように抵抗し。
乱暴に抜き取ったその植物には、根がなく、代わりに人間の腕がぶらさがっていたのでした。
「忌まわしきものめ」
ノーンはその攻撃的な物体を持ち上げ、首をかしげて注視した。
これは、あのミラディン人の汚れた血が敷石へと流れた結果なのだろうか?
ありえない。
そして前へと視線を向けた彼女は、それらの草が先々に一本ずつ生えていることに気づいたのです。
ノーンを襲う、馴染みのない緊張感。
刈り取るそれらの根の代わりについているのは、人間の足に心臓に内臓に…。
それはまるで、自身のもたらした完全を、地から腐敗させられる感覚。
広間に辿り着いた彼女の完全に広がる、肉の庭のような草たち。
眼下に繰り広げられた、彼女にとって耐えがたい現象。
そして、ノーンはそれを説明する理由を探し続けたのでした。
先ほどのミラディン人が及ぼしたのものではない。
では一体これは何なのか。
ノーンは両手を見つめた。ぎらつく油が流れ出た手首を。
まさか、自分自身がこれを?
機械聖典の秩序をここまで完璧に乱してのける力は、他に何があるというのだろう?
油があのミラディン人の身体に及ぼした影響、その理由が自分だとしたら?
法務官であるために全てを尽くしてきた。けれど何かを誤っていたとしたら? 間違っていたとしたら?
自らの内にずっと、何か見えざる欠陥が潜みながら育っており、弾け出て機械聖典を汚す時を待っていたのだとしたら?
自分自身が本質的に堕落していた?
この大修道士エリシュ・ノーンが、こんなにも不純で有機的なものを意図せず広めていた?
機械聖典を導くに相応しくないというのだろうか?
世界が捻じ曲がる感覚。
目に映る全てが、”現実味を失う”感覚。
ふと、彼女の頭に過去のある出来事が去来します。
それは、独房で眠りながらすすり泣くミラディン人。
今の情景は、その有機物と同じ感覚だと。
ファイレクシア人にとって、なじみのないもの。
その名を「悪夢」。
この世界は我がものとは違う。
ゆっくりと、エリシュ・ノーンは空を見上げた。先程、暗い人影が形を成そうとしていた場所。顔をしかめ、彼女は呟いた。
「アショク」
悪夢の魔道士
性別不詳。重力を無視した浮遊。それはノーンにも聞き覚えのある、悪夢の魔道士。
プレインズウォーカー、アショク。
そうすべきでないとわかりつつも怒り狂うノーンに対し、彼女の爪の及ぶ寸前まで近づいたアショクは、満足の笑みを浮かべたのでした。
その全てを愛でるように、アショクは大きな手を広げた。
「美しいと思いませんか? この特別な傑作のために、とても長い時間をかけたのですよ」
アショクはわずかに近寄り、首をかしげた。
「貴女の精神は非常に……独特なカンバスですよ、エリシュ・ノーン様。全くもって独特です」
「つまりこの忌まわしきものは、この汚れは、お前の仕業なのだな?」
ノーンは冷たく尋ねた。
「ええ、もちろん」
アショクは笑みを浮かべた。
その魔道士は、ノーン自身で以て実験を行っていたと告白します。
完成し、恐怖するはずのない者の見る悪夢とは何なのか。
彼女はとある人物の幻影を見せ、話を始めました。
その人物と出会ったのは、テーロスの死の国。
彼女ーエルズペスの、ファイレクシアに対する恐怖が、アショクの好奇心を刺激したのだと。
「エルズペスは逃げ延びたのですよね?」
アショクはそう言い、柔らかく微笑んだ。
「小さく、取るに足らない人間が機械聖典から逃げ延びた」
「重要ではない」 ノーンは憤りが増すのを感じた。
許されざる冒涜に、ノーンはファイレクシア兵へと攻撃命令を下しました。
アショクはこれに悪夢を実体化させ対抗します。
そして、悪夢はやがてエルズペスの形を取り。
それはノーンの映し身として彼女の前に立ちはだかったのでした。
あまりに不純にして不完全な、自分自身。
首筋を伝う、恐怖と認めたくない感情を振り払うように放たれた一閃は、その幻影を打ち砕きます。
しかしアショクが去っても残り続けたその幻影は、消え去る刹那、おぞましいほどの同情でもってノーンを見つめたのでした。
その哀れみを無視することはできなかった。人間的な何かが自分をこんなにも不安にさせる、その考えが我慢できなかった。
そして機械聖典への信奉と同じほどの確信をもって、エリシュ・ノーンは悟った。
この新たな感情を、この恐怖と不安を粛清するためには、あの人間を見つけ出さねばならない。
エルズペス・ティレルを、あの女を多元宇宙から取り除かねばならない。
今回はここまで
しれっと追加されたストーリーのくせしておもしろすぎるうううぅぅぅぅぅぅぅ!!!
あとアショクTUEEEEEEEE!!
テーロス還魂記にて、ファイレクシアに飛んだアショクは、てっきり「ファイレクシアやべぇ!傘下に入って勉強しますうぅぅぅぅ!」かと思ってましたが、とんでもねぇ。
正解は「ファイレクシアとやらが見る悪夢ってどんなのかしら」でした。
エリシュ・ノーンさえも陥れたアショク…コイツできるぞ…!
そして、ノーンがなぜエルズペスを恐れるのか、その理由も明かされましたね。
彼女こそが、ノーンの魔の手から逃れた希少な人物である、と。
ファイレクシアの法務官すらも恐れさせるプレインズウォーカーたちの存在感。
今後の展開が楽しみすぎますねぇ!?!?
というわけで今回はここまで。
次回もお楽しみに!
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