【団結のドミナリア】第3回 全面戦争のために【ストーリー】
はじめに
前回、ファイレクシアの脅威を警告すべく、ベナリア人とラーダ人の会談の場に向かったカーンとアジャニ。
しかし、その交渉の場でも姿を現したファイレクシアは、ベナリアの代表だったアロン・キャパシェンを拉致し、アジャニがそれを追います。
そして、ポータルで別場所へと移動した英雄たち。
カーンは、これらの中にもスパイがいると睨んでいたのでした。
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紛れ込んだ工作員
プレインズウォーカーのカーン、テフェリー、ヤヤ、大魔道士のジョダー、そして貴族のステンは新アルガイヴの監視塔にいました。
そして、ここへ移動する際に紛れ込んだファイレクシアのスパイ装置。
その装置を破壊し、自分たちの中に紛れ込んでいるかもしれない工作員を割り出さない限り、塔から街へ繋がる扉は開放できない。
その鍵を託されたカーンは、全員へ疑いの目を向けつつ、ファイレクシア掃討のために動いていたのです。
彼はその作戦の中で、各人二人きりになった機会に、それぞれ別の酒杯の隠し場所を教えます。
テフェリーには、トレイリア西部の海食洞に。
ジョダーにはエスタークの倉庫に。
ヤヤにはスークアタに、酒杯を隠したと。
それは全て偽りの場所。
同時に、自身の占術装置で、いずれかにファイレクシアの工作員が向かえば、裏切り者が割り出せる仕組み。
カーンは自分の作戦をそのようにして進めつつ、分散して隠れ潜むファイレクシアたちを片づけて回っていたのでした。
すると、突然聞こえるテフェリーの叫び声。
駆け付けたカーン達は、彼が怪物に襲われ、腹部に重傷を負っているのを目にします。
ヤヤが怪物を焼き払い、カーンがテフェリーを救護する中。
彼は、テフェリーの治癒のために塔の封鎖を解除するかの選択肢を迫られたのでした。
カーンはステンを一瞥した。
同行者たちそれぞれに酒杯の偽の在処を伝えたが、ステンはまだ試していなかった。他の者には聞こえないよう、低く小さな声で彼は言った。
「酒杯の在処を打ち明けねばなりません。もし私が損傷を受けて確保できなくなった場合、その知識が失われないように」
「理解します」
ステンは真剣に言った。狼狽するような様子は全く見せず、彼は壁の中のワイヤーだけに集中していた。
(中略)
カーンは気が進まないふりをし、そして言った。
「サーペイディア大陸、トロウケアの廃墟の中に隠してあります」
「それがわかれば十分です」
ステンの声は、そして不意に発した息の音は、恐ろしいほど聞き覚えがあった。
ステンは肩からローブを脱ぎ捨て、それまでは見えなかった外科手術の跡が皮膚にくっきりと浮かび上がった。
恍惚とした表情とともに、身体全体をアンテナのように変化させ、シェオルドレッドへと酒杯の在処を通信するステン。
ヤヤがそれを焼き払おうとするも触手に捕らえられてしまい。
カーンは彼女を救うために、その手足を引きちぎっていったのです。
やっとの思いで息を吸い込んだヤヤは、”ステンであった怪物”を焼き焦がしたのでした。
テフェリーの治療のため、カーンは即座にウェザーライトへと助けを求めます。
応答した船長のシャナ・シッセイは、早急な到着を約束したのでした。
ステンはアーギヴィーアにおけるファイレクシア工作員の根絶を監督していた。真逆のことを行っていたと推測するのは理にかなっていた。
カーンは言った。
「テフェリーは重傷で動けません。シャナさんが到着するまで持ちこたえねばなりません。ヤヤさん、どうやら一番元気なのは貴女のようですので、先頭をお願いします。私は真ん中でテフェリーを守ります。ジョダーさん、後方を見ていて下さい」
協力を求めて
やがて到着した巨大艦体。
カーンにとって懐かしさを覚えるウェザーライトの艦体、そして搭乗員たち。
シャナにその行き先を問われたカーンは、自身の考える作戦を伝えます。
ファイレクシアの求めるアーティファクトを寄せ餌に、シェオルドレッドを引きずり出す。
その餌とは、強大な力を持つ”酒杯”、マナを生み出す施設の”マナ・リグ”、そして"カーン自身"。
ジョダーはリスクのありすぎる作戦に反対しますが、翻ってヤヤはこれに賛同します。
カーンは言った。
「アーギヴィーアでの教訓は、私たちは個々よりも団結した方が強いということです。ファイレクシアは私たちを分断する戦略をとっています、影の中から潜伏工作員を用いて。戦力を分けたなら脆くなります。団結すればそうではありません」
「それでも」 ジョダーは続けた。
「我々の仲間はドミナリア中に散らばっている。アーギヴィーアが落ちた以上、この大陸でも最強の軍勢はもはやこちら側ではない――ファイレクシアのものだ。立ち向かうためにはあらゆる味方を引き入れる必要がある」
「手分けしよう」とヤヤ。
「味方に声をかけて、マナ・リグへ連れて行くんだよ」
話し合いの結果、ヤヤはダニサ・キャパシェンの元へ。
ジョダーはヤヴィマヤのエルフの元へ。
そしてカーンとテフェリーは、マナ・リグのジョイラの元へ。
それぞれの場所で仲間を連れ、マナ・リグで合流すると決めたのでした。
赤鉄山脈へ辿り着いたヤヤを、アジャニが迎えます。
会談の場ではアロン・キャパシェンを追った彼でしたが、今アジャニの隣にアロンはいなかったのでした。
彼の追跡中に遭遇した、娘のダニサ・キャパシェン。
彼女は「増援送ってほしい」というヤヤの申し出に、アロンを救出したのちに加わるため、先に手を貸してほしいと依頼したのです。
アロンの幽閉されたファイレクシアの基地たる洞窟に軍勢を敷き、強襲をかける一向。
しかし、強大なファイレクシアの戦力に返り討ちにあうベナリア騎士。
ヤヤやダニサが奮闘する中、洞窟の奥からは一人の大柄なファイレクシア人が現われたのでした。
その男は肘の所で融合した二組の腕を掲げ、皮肉めいた歓迎を告げた。
「ああ。昔の仲間が救出部隊にいてくれたらと思ったのだけど。残念だよ――何としてでもついて行きたかったのに」
両手に炎を留めながらも、ヤヤの内に寒気が走った。アーテイ。その名は知っていた―ウェザーライト号の最初の乗組員のひとり。何世紀も前に死んだはずであり、死人らしく血の気はない。それでも何らかの力が、ひきつり動く姿で再生したのだ。その両目には身震いするような知性が宿っていた。
「戻ってこられて嬉しいよ。それに、離れている間にとても多くのことを学んできた。見てみるかい?」
そして洞窟の入り口から、アロン・キャパシェンが進み出た。
ファイレクシアの戦力
アロンの顔には、生々しい外科手術の跡。
そこからこぼれ落ちる、ぎらつく油。
その表情は苦悶に満ち、自分が何をされたのか、その意味をわかっているかのようでした。
ダニサは憤怒のままに、ファイレクシアへと向かいます。
アーテイの命令で、ダニサに応戦するアロン。
その剣は、自らに抵抗するようにぎこちなかったのでした
「ダニサ」 アロンの声は奇妙で歪んでいた。
「やるべき事をやれ」
(中略)
ダニサの顔に絶望がよぎった。それはごくわずかな一瞬であり、遠くから見ていたヤヤは見逃しかけた。だがダニサは決意の表情で、厳しくも憐れむ視線を父へと向けた。
「わかりました、父上」
この時、アロンの刃が振り下ろされると、ダニサは脇に避けた。彼女は大剣を掲げると優雅な弧を描いて振り下ろし、父の首をその肩から切り離した。
その全てを、アーテイは無感情に見つめていた。
「芸術への敬意というものがないね。まあ、また繋ぎ直せば良いのだけど」
彼は三本指の手を振った。
やがて現われる、山をも打ち壊す巨体。
ファイレクシアン・ドレッドノート。
それがまき散らした毒は、木々を溶かし小川を沸騰させたのです。
その巨大機械によって瓦解させられたベナリア騎士へ、ファイレクシア人は容赦なく襲い掛かり。
ラノワールのエルフたちの矢は、巨大兵器の装甲に届きすらしなかったのでした。
「止まれ!」 アーテイが呼びかけた。
(中略)
「ダニサ、戦いをやめさせてもらおうか」
「さもなくば……?」 彼女は尋ねた。
アーテイは微笑んだ。彼はドレッドノートをひとつの手で、酸の飛沫で溶けた岩石を別の手で示すと目を見開いた。頭部の傷跡が、喜びに持ち上がったようにも見えた。
彼は答えた。「さもなくば」
ダニサは片手を挙げ、すると騎士たちは戦いを止めた。
(中略)
「ヤヤ、アジャニ。君たちが私にその身を捧げてくれないなら、この者たちを始末するようドレッドノートに命じよう。全員をね」
万策尽きた、そう思われたとき。
現われたのは、巨大な、黄金の帆船だったのでした。
それは、失われたと思われていた古のアーティファクト。
何百人というケルド人がそこから飛び降りると、ドレッドノートの頭部に攻撃を始めたのです。
ダニサの一喝で、同じように地上から強襲を行うベナリア騎士。
そしてラーダがその怪物の目を貫くと、ドレッドノートの悲鳴がそれに続いたのでした。
アーテイが叫んだ。
「シェオルドレッド様がこれを聞き逃すと思うな!」
「ぜひ聞いてもらいたいね!」 ヤヤが言い返した。
関節がひとつ、またひとつと死して緩み、ドレッドノートの身体は沈んでいった。背中のケルド人たちは歓声を上げ、そして伏せて落下に備えた。
(中略)
その衝撃は山々に反響し、そして雪崩や土砂崩れの轟音が続いた。だがやがてそれらも静寂の中に消えていった。
今回はここまで
カーン達5人が繰り広げる監視塔での探り合いは、ストーリー1本分で語られた壮大な物語でした。
誰がファイレクシアとなっているのか不明の、不気味かつホラーな状況が、カーンの視点で繰り広げられます。
ここまでお読みの方は、もう誰が裏切り者か分かってしまっているかとは思いますが、なかなかに読み応えがありますのでぜひ本編の方もお読みください。
巨大ファイレクシアン・ドレッドノートを制し、一件落着のヤヤたち。
次回は、ジョダーの物語をメインに追おうと思います。
お楽しみに!
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