【Φ完全なる統一】第4回 ヴラスカの完成化、ナヒリの犠牲【ストーリー】

2023年3月8日

はじめに

前々回、戦力を分断されその人数を半減させながらも、新ファイレクシアの破滅作戦を決行すると決めた英雄たち。

その遂行のため、彼らは新ファイレクシアのより深層へ向かうこととなります。

参加したのは、エルズペス、ジェイス、ナヒリ、コス、ケイヤ、魁渡、そしてタイヴァー。

7人は安全であった溶鉱炉階層を離れ、敵の本陣たる深層へと踏み入れることになるのでした。
 

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【Φ完全なる統一】背景ストーリーまとめ





目次

愛する者の叫び

溶鉱炉階層から、トンネルを使い狩猟迷宮、外科区画を迂回し、ドロス窟へと辿り着いた英雄たち。

コスは作戦を伝えます。

ドロス窟を支配する七人の族長の半分は、ノーンへの反乱軍に力を貸している。

その隙に、下層の美麗聖堂へ向かうトンネルを抜けなければならないと。

大気中の屍気に抵抗するため、エルズペスはニューカペナの光素を全員へ配りました。

全員がそれを飲み下す中。

突如貨車の上に倒れ込み、身体を引きつらせるジェイス。

光素に人体への害はないとエルズペスが狼狽し、タイヴァーが彼の腕を掴む中、ジェイスは息をのんで立ち上がります。

そして、周囲に青白い火花を散らせ、虚空を見つめながら言うのでした。

光素によって晴れた頭に、彼女の苦しむ声が聞こえた、と。

タイヴァーは顔をしかめ、だがジェイスを放しはしなかった。

「彼女? 彼女とは誰だ?」

「ヴラスカさん」

(中略)

ジェイスは再びタイヴァーを振りほどこうとした。

「行かせてくれ。行かなきゃならないんだ。彼女は俺を必要としてる。助けないと、きっと生きてはいられない」

「俺たちには任務が――」

コスが口を開いた。

ジェイスは頭を激しく動かし、その両目はようやく焦点を定めたようだった。

「ヴラスカさんが俺を必要としてるんだ」

彼は怒りとともに言い、そしてひとつ深呼吸をして自らを落ち着けた。

「俺がいなくても先には進めるはずです。俺は彼女を助けに行きます。後で一緒に合流しますから。どうか」

 

ジェイスは渾身の力でタイヴァーを振り解くと、振り返ることなく荒野を進みます。

コスや魁渡が懸念に顔を曇らせる中、ナヒリは彼についていくしかないと提言したのでした。

彼が酒杯起動の鍵を持っており、それがなければ全てが意味をなくすのだからと。

合流した全員がジェイスに姿を隠蔽してもらいつつ、ウラブラスクの反乱軍とドロス窟のファイレクシアンが戦う横を抜けた先にて。

彼らはヴラスカを発見します。

シェオルドレッドの闘技場にて。

法務官の楽しみのために、死ぬまで戦わされる者として。

「ヴラスカさん」

ジェイスがそう言い、再び駆け出した。ナヒリとケイヤがすぐさま後についた――ナヒリは酒杯を、ケイヤはナヒリを追って。

(中略)

エルズペスが門をくぐる直前、魁渡がその腕を掴んだ。

「駄目です。ジェイスさんは仲間ですが、こんなのは愚行です。酒杯を取り戻して進み続けないと」

可能な限り平静な表情で、エルズペスは彼を見た。

「自分たちを救うための抵抗すらできない戦いに、どんな意味があるでしょうか」

無念を滲ませ、魁渡は手を放した。

エルズペスは入り口へと意識を戻し、シェオルドレッドの闘技場に足を踏み入れた。




ヴラスカの完成化

不可視のジェイスは、ひたむきにヴラスカへと駆け。

英雄たちはそれに追随しつつファイレクシアンたちを退け続けたのでした。

コスの高熱の拳が。エルズペスの剣の一閃が。そして何よりもナヒリの強大なるナイフの雨がファイレクシアンたちを討滅し続け。

最後の一体が倒れた時、ジェイスはヴラスカのもとへと辿り着いたのです。

ジェイスの接近と裏腹に、片腕を伸ばして後ずさるヴラスカ。

「ヴラスカさん?」

傷ついた感情を隠さず、彼は言った。

「ヴラスカさん、エルズペスさんが一緒にいます。光素もあります。メリーラさんもいます、ファイレクシア病を治せる人が。傷の手当もできます。ヴラスカさんが思うほど悪くは…… 」

「違う」

普段は確固としたその声は空ろで、疲弊していた。

「違うんだ、ジェイス。ごめんよ、お前を呼んだこと。そんなつもりはなかった。私らは繋がってて、けどお前は――聞くべきじゃなかった」

(中略)

「お前は私を救えなかった、ジェイス。お前にはできないんだ。間に合わなかった。私の中にあるんだ――ファイレクシアは、私ですら抗えない毒だ。もう手遅れなんだよ」

恐怖をありありと浮かべ、ジェイスは彼女を見つめた。

 

ヴラスカは、途方もない意志の力で自分自身を保っている。

メリーラは唇を嚙みながらそう告げます。

彼女が彼女であるうちに殺害すべきだとナイフをかざすナヒリを、殺意を持って睨みつけるジェイス。

そんな彼の反応に、英雄たちはジェイスをここに置いて退却することを決めたのでした。

彼から酒杯を奪い、去ろうとする仲間たちと、それを絶望を持って見つめるジェイス。

「ジェイス、お願いだ」

ヴラスカが言った。

「私は終わりなんだ。それを受け入れさせてくれ」

彼女は言葉を切り、かすかな笑みを唇に浮かべた。

「死ぬ時はひとり、ずっとそれはわかってたからさ」

「ひとりでは死なせません」

すぐさまジェイスが言い返した。

「死なせません」

「けど私は死に向かってるんだ」

(中略)

ジェイスは血に濡れたヴラスカの手をとった。

「目を閉じてください」

ヴラスカは従った。

彼が見せたのは、陽光の輝くラヴニカの大通り。

雲一つない快晴に立つ、普段着を纏ったジェイス。

それは、彼の最後の贈り物。

二人はラヴニカの街路を歩き、ギルドの本拠地や美術館を訪れたのです。

共に歩めると思っていた未来。

ふたりにとっての完璧な世界。

やがてヴラスカはジェイスへと告げました。

ファイレクシアが全てを変える前に行ってくれと。

しかし、ジェイスはこれを断ります。

溜息のような声で、ヴラスカは言ったのでした。

自分だけではない。

ジェイスとて、もう手遅れなのだと。

「このドロス窟では、屍気の池から空中に油が漂って感染を広めてる。お前も走ってきたんだろう。勇敢で馬鹿な、私の彼氏は」

彼女はかぶりを振った。

「お前も私と同じように、終わりなんだ」

「ここに辿り着く前に光素を飲んできました。俺には時間があります、俺たちには」

ジェイスは溜息をつき、ヴラスカに近寄った。彼女は身体を寄せ、ふたりの唇が触れ合った。終わりの影の中、最後にもう一度の口付けを。

彼女の唇に嘘の味を感じたその時、何かがジェイスの右掌を貫いた。焼けるような冷たさに、極めて慎重に作り上げた幻影が砕け散り、焼け焦げたファイレクシアの空の下へふたりは戻された。

ジェイスは身体を離そうとしたが、ヴラスカは彼をしっかりと掴み、手を放しはしなかった。彼女は何よりも甘美な笑みを見せた。

「ファイレクシアの栄光のために」

それは心地良さそうな声だった。




ナヒリの犠牲

ヴラスカに貫かれたジェイスは遁走し、入り口から敵の強襲を受け戻ってきた英雄たちと鉢合わせます。

完成化したゴルゴンと、ファイレクシアの軍団に挟まれる形となった英雄たち。

ヴラスカの笑い声とともに、死が彼らに迫る中。

ナヒリは歯を食いしばって息をつくと、その魔法は燃え立つ潮のように上昇し、彼女の剣は眩しく熱を帯びたのでした。

「ここで戦っても勝利なんてないわ。動き続けなきゃ作戦は進まない。だからあなたたちは動き続けるのよ。何かに掴まりなさい!」

(中略)

ナヒリの背骨から伸びる骨が開くように広がった。まるでファイレクシア自体から途方もない力を奪い取ることが、恐るべき変質を加速させているかのように。

(中略)

彼女自身の両目は今や、火の消えた石炭のように端から端まで真黒だった。

「これを無駄にしないで。やるべきことを終わらせなさい」

ナヒリは剣を振り上げた。

その瞬間、彼女の姿は伝説から現れたようだった――その瞬間、彼女は次元すら切断できたかもしれない。

そして途方もなく大きな、恐るべき一撃で彼女はその通りのことを行った。

 

エルズペスは粉塵の中で身体を起こします。

自分が無事であることと同時に、彼女は持っていた光素が全て砕け、虹色の霧へと消えていくのをみとめたのでした。

泣きたくなる気持ちを押さえるエルズペス。

やがて瓦礫の中から現われたコスは、唖然とした様子で上を見上げたのです。

「馬鹿か……なんてことを」

彼は息を吐いた。

「え?」

彼は指をさした。

「見ろ」

彼女は顔を上げた。銀白色の空に巨大な穴が開いていた。暗く粗く、まるで誰かが叩きつけて通り道を開いたかのように。

「彼女が闘技場をそっくり美麗聖堂へと落とした。信じられん」

仲間たちも瓦礫の中から集まってきた。タイヴァーは魁渡に手を貸し、ケイヤはジェイスを支えていた。酒杯の入った袋が自分のそれよりもずっと無事であるのを見て、エルズペスは安堵した。それは今も壊れてはいないようだった。

ナヒリの姿はどこにもなかった。

 

穴からなだれこむファイレクシアたちの戦いに便乗し、祭壇へと向かう一向。

コスはナヒリの犠牲を無駄にするなと鼓舞します。

そしてその道中、ジェイスは、自身が永くないことを悟り、酒杯の起動は自分がやると言い続けていたのでした。

観念したように、酒杯を預けるケイヤ。

受け取ったジェイスの表情には、喜びも不満もなかったのです。

ジェイスが両目に浮かべる絶望はエルズペスの心を痛めつけ、彼女はその姿を長いこと見てはいられなかった。

仲間の二人を失い――ジェイスを含めれば三人だ――光素もすべて失った。そして新ファイレクシアの中心に囚われ、帰る道は定かではない。

これ以上、失うものは何が残っているというのだろう?




今回はここまで

ナヒリィィィィィ!!!(´;ω;`)

最後に見せ場を作って散っていくの、カッコよすぎないか?

最古参PWとして、無類の強さを誇っていたということがよくわかるエピソードです。

そしてなにより、ヴラスカ&ジェイスのエピソードは悲しすぎますね…。

ヴラスカは孤独な復讐者として生きるつもりが、ジェイスとの恋に落ちたことでそれ以外の生き方もあったのだと再認識しました。

その彼女から、完成化する直前に出たセリフ。

「死ぬ時はひとり、ずっとそれはわかってたからさ」

 

きつぅい!!!(´;ω;`)

皆さま、ここで今一度イクサランのストーリーでも読み返しましょう…。

残酷すぎるストーリーから、一度現実逃避しましょう…。

アノコロハヨカッタナー…。

【イクサラン】第1回 孤独のジェイス【ストーリー】

 

というわけで、ヴラスカが完成化し、ジェイスはその攻撃を受け、ナヒリは仲間のために命を賭しました。

凄絶な敗北劇を繰り広げつつ、彼らは確実に深層へと迫っています。

はたして次に英雄たちを待ち受けるのは…。

次回もお楽しみに!

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*出典*

メインストーリー第3話:信じがたい喪失