【ニューカペナの街角】第2回 エルズペスの仕事【ストーリー】
はじめに
前回、安住の地を求めてニューカペナを訪れたエルズペス。
彼女はその街で生活を営みつつ、アジャニの依頼を達成する機会を伺っていたのでした。
それは、ニューカペナがファイレクシアを退けたという秘密を探ること。
そしてそのために、彼女は街の巨大組織の一つ、貴顕廊一家へと加わったのです。
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博物館にて
貴顕廊に取り入ってから数週間。
目的の博物館に仕事を得たエルズペスは、そこで雑用をこなし続けていたのでした。
そして、彼女が狙いをつけていた人物がひとり。
それはこの博物館の館長にして、貴顕廊の長、ザンダー。
その角を持つ吸血鬼こそが、ニューカペナとファイレクシアンの真実を把握している。
そう踏んだ彼女は、ここで単調な作業にも粛々と従事していたのでした。
そして、当のザンダーも、エルズペスへと目をつけていたのです。
雑用をこなす彼女に、ザンダーは提案します。
今以上のものを得たければ、更なる働きが必要だと。
「何をすればいいのですか?」
「少しの仕事だ」 ザンダーは立ち止まった。
「だが心して欲しい。君は一家の真の一員となる道を歩き出すことになる。貴顕廊の一員として生涯を過ごすのだ。従ってそれは君が真に求めるものなのかをよく考えることだ。そうでないならば……」
彼は博物館の正面玄関を示した。
「今すぐ立ち去ってくれたまえ。誰も咎めはしないし、今後君を悩ませることもしない」
(中略)
彼女はザンダーをまっすぐに見つめた。
「やります」
それからザンダーは、エルズペスへと様々な依頼をします。
開けてはならない荷物の運搬や、目標の人物の追跡…。
そして仕事を終えるたび、彼は少しずつ情報を開示したのでした。
ひとつに、この街の歴史。
“大いなる脅威”に立ち向かうべく、大天使と悪魔王が手を取り合ったこと。
そしてその過程で五つの家はデーモンと契約を交わし、ザンダーも半悪魔となったこと。
ひとつに、ニューカペナの誰もが求める「光素」の正体。
グラスに注がれた輝く液体は、躊躇いながら飲んだエルズペスの中に力をもたらし、疲労を取り除いたのでした。
人々が争うだけはある、そうザンダーは認めます。
「こんな素晴らしいものをどうして?」
(中略)
「誰が知るというのかね? ニューカペナを永遠に続く壮大なパーティーにするため、かもしれないな」
ザンダーは含み笑いとともにかぶりを振った。
彼自身、そのような説明は信じられないというかのように。
エルズペスもそれは全く信じなかった。
これほど強力で貴重なものは、ただ楽しむためのものではない。目的があるに違いないのだ。そして彼女は推測し始めていた。
その目的とは、ファイレクシアンを打倒するためかもしれない。
同胞との出会い
その日エルズペスが任された仕事は、胸に秘めた光素の小瓶の運搬。
目的の公園へと至り、忘れ物のように置かれた紙袋へと彼女が手を伸ばしたとき。
素早い動作で、その手は別の手に制されたのでした。
エルズペスと対面する女性。
翠玉色の瞳、黒と白の混じった髪、そして浅黒い肌。
その自然の生命力は、彼女がプレインズウォーカーであるとエルズペスに気づかせるほどだったのです。
わずかなやり取りで嘘をつけないと悟ったエルズペスは、彼女へと目的を話しました。
自分は、この次元の歴史を知りたいのだと。
「脅威が迫りつつあって、その情報を手に入れようとしているんです」
「それは間違いないし、どうやら動機は同じのようね。そうそう、私はビビアン」
「エルズペス、です」
偽る理由はなかった。人を見る目はあると信じており、ビビアンは信用に値すると感じた。
「誰のためにその情報を集めてるの?」
ビビアンが尋ねた。エルズペスが返答を考えている間に、ビビアンは続けた。
「当ててあげる。ゲートウォッチ?」
その名が出たことで、エルズペスはビビアンをまっすぐに見つめた。
ビビアンと名乗るプレインズウォーカーも、同様の目的で動いていることを話します。
そして、その「脅威」についても教えられることがあると。
彼女は一緒に来るよう誘いますが、エルズペスはこれを断ります。
得るべき情報を知るまで、ここは離れられないと。
了承したビビアンは、情報が入ったら伝えると約束し、去ろうとしたのでした。
「どうして私を手伝ってくれるんです?」
ニューカペナに来てもう長くなる。見知らぬ者がただの善意で手を差し伸べてくれるというのは、怪しく思えるようになっていた。
「この次元の問題にはまり込む前に、詳しいことを確認した方がいいわよ」
ビビアンは重苦しい声色で告げた。
「次に会う時までにね」
「それはいつになります?」
声を上げないように、エルズペスは尋ねた。
「価値のあるものが手に入った時に」
ビビアンは小さく頷いてみせた。
「会えて嬉しかったわ」
華やいだエルズペス
仕事の帰りが遅れたことを謝罪するエルズペス。
問題ないと微笑むザンダー。
彼はエルズペスへと、話し合いたい重要事項があると言います。
それは、『敵対するもの』という存在について。
エルズペスも小耳に挟んだことのあったそれは、ニューカペナの五つの家による均衡を崩しかねない者。
それが持つと言われている『源』は、光素を無尽蔵に供給するのだと。
ザンダーはエルズペスへと更なる仕事を依頼します。
舞台座へ潜入し、『源』の噂を調べること。
そして、その在処を突き止め、鍵を開けておくこと。
武器としてナイフを託されたエルズペスは、成功報酬としてザンダーの書庫の閲覧権を要求しました。
小出しの情報でなく、全てを知りたいと。
ザンダーは彫像のように無言だった。
(中略)
「良いだろう」 やがて、ザンダーは言った。
「役割を果たしたまえ。そうすれば我が書庫の知識は全て君のものだ」
「ありがとうございます」
エルズペスは退出しようとし、だがザンダーは彼女を止めた。
「おや、まだ終わりではないよ」
「はい?」
ザンダーは楽しむような笑みを広げた。
「そのような装いで舞台座のキャバレーに向かうつもりかね?」
右肩に羽、身体に金属の装飾を纏ったエルズペスは、キャバレーへと潜入していました。
バーカウンターへ向かった彼女は、その先のエルフへと仕事の斡旋を依頼しますが、舞台座の一員は無下にこれを断ります。
食い下がる彼女に目を付けたのは、隣に現われた歌姫キット。
彼女はエルズペスの名前に興味を持つと、壁際の小部屋へと彼女を案内したのでした。
そこに待ち受ける、二人の女性。
「キット、その人は?」
ふたりのうち年長の女性が眉をつり上げた。その前の卓に丸くなる犬も同時に顔を上げた。
「貴女が言って」
キットはふざけたようにエルズペスを突くと、長椅子に滑り込んだ。
「エルズペスといいます」
「エルズペス」 先ほど問いかけた女性が、面白がるように繰り返した。
「墓場以外でその名前に会うのは初めてね。現代にようこそ、お人形さん。いいドレスじゃない、名前とは違って全然古臭くなくって。私はジニー」
そう名乗った女性と、隣にいるもう一人の女性はジアーダ。
ジニーと違い、軽装で寡黙な少女。
キットは面白そうに言います。
エルズペスのような女性が、祝祭”クレッシェンド”を手伝うのは面白いのではないかと。
ジニーは頷き、エルズペスを見た。
「働きたいというのは本当?」 エルズペスは頷いた。
「それなら、幾つか仕事をあげられると思う。上手くやれたなら、クレッシェンドに向けて舞台座の一員になれるかもね。言っておくけれど、きっと見逃せないパーティーになるわよ」
敵対するもの
鏡張りの部屋に座す「敵対するもの」。
そして彼を取り囲む、忠実な副官と役員たち。
彼らの中で最も地位の高いものが紹介を始めます。
これこそが『源』だと。
「敵対するもの」はしばし考え、そして吠えるような笑い声をあげた。何という。あれが「源」だというのか? 実に哀れを誘う。とてつもない力、それが熟して奪われる時を待っている。
(中略)
「我らが、クレッシェンドを注目に値するものにしてやろうではないか」
オブ・ニクシリスはグラスを回し、自らのそれを乾杯に掲げた。
「この次元の支配に、乾杯だ」
今回はここまで
せっかくきれいな装いを手に入れたのに、あっという間にそのお役目御免になるエルズペスさん。
以降舞台座へと潜入完了した彼女は、給仕係として働くことになります。
パックの表紙イラストにもなったのに、出番一瞬やんけ…!
そして、ニューカペナに巣くう脅威「敵対するもの」。
その正体がオブ・ニクシリスであることも、しれっと判明しました。
やがてニューカペナに、祝祭”クレッシェンド”迫る!
…まぁMTGのストーリーにおいて、祝祭なんて良いことないですからね…(”真夜中の狩り”のストーリーを横目に見ながら)
というわけで次回もお楽しみに!
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