【イニストラード:真紅の契り】第3回 訪れる日の出【ストーリー】
はじめに
霊魂となったカティルダの助力により、拘禁されていたシガルダは解き放たれ、婚礼から招待者以外を締め出していた魔法も消失します。
式場の外で待ちぼうけを喰らっていた英雄たちの突入の時!
オリヴィアのもたらした永遠の夜に決着をつけるべく、彼らは式場を奔るのでした。
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狼と吸血鬼
魔法の解けた式場にて。
チャンドラが門を燃やし。
ケイヤは苦しむ霊たちを解放し。
それらの手助けを得て、アーリンはオリヴィアの元へと駆けたのでした。
溢れる血の匂いに内なる狼が目覚めそうになるのを抑えながら、彼女はオリヴィアを追い詰めます。
しかし、宝玉の剣を振るう吸血鬼の攻撃に、アーリンは劣勢に立たされたのでした。
オリヴィアは刃の端を指でこすった。彼女はそれを綺麗に舐め、そして顔をしかめた。
「わかっていましたが、お前の血は不味いですね。そうでしょうとも。お前は何故自らを解き放たないのです? その姿では、勝つことなど決してできないでしょうに」
その通りだった。忌々しい事実、だがその通りだった。
オリヴィアの一言により、解放される獣の力。
鍵を取り戻す。終わらせる。
人間的な怒りか、動物的な怒りか、アーリンは衝動のままにオリヴィアへと迫りますが。
吸血鬼が背後にまわる一瞬。それに狼は気づくのが遅れたのでした。
何という皮肉だろう――吸血鬼の硬直した腕は、絶好の杭となる。
アーリンの喉から哀れなうめき声が漏れた。
彼女は倒れた。
一方、チャンドラはエーデリンと背中を守りつつ、なだれ来る吸血鬼たちを倒し続けていたのです。
ケイヤやテフェリーも戦線に加わる中、ただ一人戦いの場にいないアーリン。
チャンドラがアーリンを手助けすべく走り出そうとしたとき。
衛兵の槍を受け止めるが如く、巨躯の狼が乱入したのでした。
そして、背後に控えるように、数十体の狼たちも。
その狼は、エーデリンの見覚えのある傷を持つ男。
トヴォラーだった。
「手助けをしに来てくれたと?」 テフェリーが尋ねた。
その狼は頷いた。ケイヤはひとつの扉を指さした。
「アーリンさんはあっちに」
彼女が言い終わるや否やトヴォラーは駆け、シャンデリアの残骸を跳び越えてアーリンのもとへ向かっていった。
吸血鬼の因縁
ソリンはエドガーと相対しながら、祖父へと積年の思いを吐きます。
イニストラードのために捧げたものを。
そして、祖父の未来への熟慮の期待を。
しかし、エドガーは嫌悪と嘲りの目でソリンを睨みます。
「お前はまるで子供だな。ずっとそうだ」 エドガーは言い聞かせるように言った。
「心底恥ずかしい。数千年前、お前に贈り物を与えた。今、私は残る生涯を、お前がそれを浪費したと知りながら過ごさねばならない」
「そんなものは頼んでなど――」 ソリンはそう言いかけた。
「わからないかね、贈り物とはそういうものだ」
一度は、エドガーの力に圧倒されたソリン。
しかし彼は闇から舞い戻ると、今度はソリンが祖父を追い詰めます。
迷いのない彼の剣は、やがて祖父の首を捉えー。
それでも、何かがその命を奪う手を押しとどめていたのでした。
それは、死して久しい天使の見えざる手かもしれない。
ソリンは顔をしかめた。
「行け。私の前から消えろ」
遁走するエドガー。
ソリンは虚ろなる気持ちで、彼のあった場所を見つめていたのでした。
心配を瞳に宿し、話しかけてくる紅蓮術師。
そして、憐れみをたたえたまなざしで同情の意を述べるテフェリー。
ソリンは彼を睨みつけたかった。お前に何がわかる? お前などに判断されてたまるものか。それでも彼はわかっていた――テフェリーもまた、古い存在だ。テフェリーもまた、喪失を知っている。想像を超える物事を見てきた者なのだと。
(中略)
「感謝する」
彼に言えたのは、それだけだった。
蘇る日の出
アーリンが見るのは、森の夢。
かつての群れ仲間たちとともに、狩りに駆ける夢。
今や自分たちの元から去った仲間を思い出させる、喪失の夢。
すると、彼女は夢の中で自分を呼ぶ声に気づいたのでした。
「アーリン、狩りの時間だ」
(中略)
目を開けると、まずトヴォラーの姿が見えた――今もなお、前回の遭遇での傷を負いながら。柔らかな表情が力強い身体に安堵を分け与えた。
「あなたがここに?」
「助けを呼んだだろう」
その返答は狼の鼻面から粗く発せられた。
気づけば、彼女たちの周りにはかつての群れ仲間たちがいたのです。
トヴォラーの過去の行いは許さないと宣言しつつも、一時的な協力を結ぶアーリン。
狼たちがオリヴィアを追い詰めると、彼女は捨て台詞とともに月銀の鍵を手放し。
そして、狼たちに引き裂かれる前に、エドガーとともに逃走したのでした。
かくして、彼らは再びケッシグへと向かっていたのです。
新しく、月銀の鍵に繋がれた霊のカティルダとともに。
「処理すべき物事がある」と語ったソリンをステンシアに残しつつ。
曖昧な表現をしつつも、彼が死者や負傷者の世話をしていたことは、アーリンにも推測がついたのでした。
やがて彼女らは、セレスタスの中央へと戻ります。
魔女の詠唱、そして手に入れた鍵と錠が合わさった時。
閃光が溢れ…それらが徐々に消え去り…ついには念願の"その時"が訪れたのです。
やがて地へと沈みゆく月。
アーリンはすぐに、セレスタスの外縁で日の出を待つ仲間の元へと寄りました。
そしてその後を、今や傍から離れない彼女の群れ仲間も追ったのです。
全員が共に、この数か月で初めて訪れるイニストラードの日の出を見守った。他のあらゆる日の出と何ら変わりない――だがそこには美があった。日の出のひとつひとつが贈り物なのだ。それは予想を拒み、信念すら拒んでしまいかねない。あらゆる朝、黄金の球が地平線から昇る。ただそれだけで、世界に光をもたらしてくれる。
この数か月で、初めて訪れる日の出。他のあらゆる日の出と何ら変わりない。だからこそ、完璧な日の出だった。
エピローグ
アーリンはイニストラードに沸く祝宴の中、葉の影にエーデリンとチャンドラの姿を見とめます。
別れの時を惜しみ、抱擁をかわす二人の姿を。
そっとしておこうと離れた時、彼女に話しかけたのはケイヤでした。
「一緒に仕事できて楽しかったわ、アーリンさん」
「私もです。これが最後にならないことを願います」
「最後にはならないでしょうね。ここには無念の幽霊が沢山いるもの。きっと長くしないうちに私の力が必要になるわよ。ただ覚えておいて、私は無料じゃ働かないってことを」
「わかっていますよ」
アーリンも笑った。
揺らめいて消えるケイヤに代わり、彼女が話しかけたのはテフェリー。
彼の手にあるのは、月銀の鍵。
テフェリーはそれの特性が時間魔法に寄与すると笑ったのでした。
いずれ必ず返すよう念押しするアーリンに、テフェリーは突如声を落とします。
テフェリーはアーリンから少し離れたまま、言葉を探した。
「悪い知らせでも?」
「そうかもしれない。気にかけておいて欲しい物事がある。最近、厄介事が起こった。古い厄介事が」
曰く、深刻な脅威の影が多元宇宙にあると。
黒い油や、機械交じりの肉体を見たら知らせるようにと。
その脅威の名は”ファイレクシア”。
「イニストラードは耐える」。そう言ったアーリンに見せた彼の微笑みは。
普段のものとはまるで違う、曖昧なものになっていたのでした。
やがて静かに消え去るテフェリー。
アーリンが残されたのは、幼き頃から知るケッシグの森。
それでも森は彼女を呼んだ。常緑樹の木漏れ日が見えた。花弁のように、雪が森に舞い降りた。大気には冬の匂いが強く満ちていた。
今に、友人たちは離れていく。
けれど、アーリン・コードには自分の群れがいる。
今回はここまで
最近のストーリーでは珍しい、完全なるハッピーエンド!
思い返せば、ゼンディカーはニッサとジェイスの喧嘩別れだし、カルドハイムは悪役の逃げ切りだし、ストリクスヘイヴンではウィルが片足を失った…。
近年ロクな終わり方してねーな!!( ゚Д゚)
ただ、ソリンは祖父エドガーのことで心に傷を負い、アーリンはトヴォラーの罪を晴らすための責務を負う、といった幕引きでしょうか。
オリヴィアも死んだわけではないし、イニストラードの物語は続きそうですね。
そして、テフェリーからもたらされる「ファイレクシア」の情報!
来年のドミナリア再訪の流れのままに、来るか!?ファイレクシアとの全面対決!
物語も水面下で大きな物事が動いてそうです。次回の物語が楽しみでたまらんですな!
では!続きものだったイニストラード紹介もここまで。
次回は神河にて~!
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