【イクサラン】第9回 不滅の太陽を守る者【ストーリー】

2023年3月13日

はじめに

前回、水難事故によって喪失していた記憶を取り戻したジェイスと、その記憶を追体験したヴラスカ。

ヴラスカは、自分が暗殺者であった過去、そしてジェイス自身を殺そうとした過去を知られることを恐れながらも、ジェイスの利用され続けた過去に同情し、彼を受け入れます。

ジェイスも、彼女とともに過ごしたイクサランの期間は人生最高の時間だったと話し、この先の冒険へ踏み出すことを決めたのでした。

 

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【イクサラン】背景ストーリー紹介まとめ【イクサランの相克】




目次

太陽のもとへ

ジェイスはヴラスカとともにオラーズカへの階段を昇りながら、取り戻した記憶について考えていたのでした。

幼少期のものを含めて、失っていたほとんどの記憶は取り戻した。

しかし、自分をこの状況に追い込んだ金色のドラゴンの名前だけが思い出せないのです。

 

そして、記憶にあるもう一体のドラゴン。

ウギンという名前のそのドラゴンとのやり取りを、ジェイスは思い出していたのでした。

あの精霊龍が気付かれることなく埋め込んだ、巧妙に隠された精神魔術の賢い一片。その呪文が残していたのは単純な命令だった。もし何者かが記憶を読もうとしてこのウギンとの遭遇を発見したなら、その記憶は隠されるとともに直ちにプレインズウォークで強制的に離れる。ここへ。イクサランへ。

ジェイスは狼狽した。何故ウギンは俺が持つ記憶を隠す? 何故俺をよりによってここに? 俺は寄せ餌になるってことなのか?

……そして俺は記憶を消される前に、金色のドラゴンの精神に何を見つけたのだろう?

彼は精霊龍と金色のドラゴン両方の記憶を脇に除け、時間が許す時に熟考しようと結論づけた。

 

やがて塔を昇りきった二人は、重い扉の前へとたどり着きます。

二人は顔を見合わせ、ラヴニカで「迷路」を解いた実績のあるジェイスは、魔法を用いてこれを解き始めたのでした。

「これが俺ですよ」 彼は楽しみとともに言った。

「ジェイス・ベレレン、ギルドパクトの体現にしてテレパスにして幻影術師にして迷路の達人」

「言いやすい名前なことだ」

 

迷路の終点。

ジェイスはあることに気づき、愕然とします。

扉の模様。そして、自分たちがプレインズウォークする際に現われる紋様。

それは、ラヴニカの「アゾリウス評議会」を表すマークだということに。

そして、扉の向こうにある気配とともに、ジェイスはその憶測を口にしたのでした。

「アゾリウスの創設者、アゾールです」

(中略)

『アゾールはスフィンクスだったのか?』 恐怖を抑え、彼はヴラスカへと心で尋ねた。

彼女は心配そうな表情でジェイスを見た。スフィンクスが彼にとって何を意味するか、ヴラスカはそれを知っていた。彼女はこめかみを指で叩き、ジェイスは心で声を聞いた。

『もうスフィンクスにお前を傷つけさせはしないよ』

彼女は決意とともに言った。その両目に残酷な琥珀色のひらめきが走った。

その言葉に、ジェイスは彼女を抱きしめていたかもしれなかった。だがヴラスカが接触を好まないことを思い出し、感謝の笑みを見せた。




法を守る者

扉を開けた二人を迎えたのは、巨大なスフィンクスの影。

玉座に座す者へ、「ギルドパクトの体現者」として名を名乗ったジェイス。

アゾールは、他ならぬ自身が作成したギルドパクトの役割が全うされていることを喜ばしく思いつつ、彼らの思惑を察したのでした。

天井を一瞥するスフィンクス。

その視線を追いかけたヴラスカは、ついに目にします。

自分たちをこの次元へと幽閉しているアーティファクト。

不滅の太陽。

 

ヴラスカの脳内には、いくつかの疑問が駆け巡りました。

なぜ自分の雇い主は、プレインズウォークを禁ずるものを欲したのか?

そして、アゾールはなぜこのようなものを造ったのか。

 

戦闘態勢に入るヴラスカに、アゾールは玉座から下りながら語ります。

これは、とある巨悪をここへ幽閉するために、自らの灯を犠牲にして作成したものだと。

作戦に協力した友はその巨悪を呼び寄せるためにここを離れたこと。

そして、友が不滅の太陽起動の合図をすることなく、ここへ戻ってくることはなかったのだと。

アゾールは尾をひらめかせて言った。

「計画は千年以上前に立てられ、それから百年程して我はイクサランへやって来た。あの者は失敗したのだ。何が起こったのかはわからぬ、だが我が遂行は完璧であった――」

ヴラスカは近くの窓から身を投げ出したい衝動をこらえた。こいつはこの次元に、千年も居座ってたのか。

 

アゾールは続けます。

その後、彼は不滅の太陽を統治の象徴とし、様々な者へと与えた。

が、どれもそれを保持するには値せず、結果それは今ここにあるのだと。

自身の創造したものに不備はない。

この次元の民に、欠陥があるのだと。

「イクサランはこの数世紀ずっと、お前のお節介のせいで混乱してるんだよ」 ヴラスカは吐き捨てた。

「私はこの次元を修復し――」

「この次元は壊れてなんていない!」ヴラスカは叫んだ。

(中略)

「不滅の太陽は、この次元で何百年も紛争を引き起こしてるんだよ」

ヴラスカは顔をしかめ、だが熱く続けた。

「薄暮の軍団に大陸を征服させた。太陽帝国と川守りに全面戦争を起こさせた。お前が作ったものがこの次元の均衡を乱してるってのに、お前はその責任を負おうとしない」

ヴラスカはアゾールの隣に膝をついた。

「お前のせいで、この次元で戦争が起こってる。私がラヴニカでいわれなく苦しんだ牢獄も、私らが服従させられたのも、元を辿ればお前がやったことなんだ」

彼女は更に近寄り、囁き、両目が黄金に輝いた。

「罰を受けろ。指導者が責任を放棄するな」




真の黒幕

「……船長」 ジェイスが背後から割って入った。その声は穏やかで落ち着いていた。

ヴラスカは彼を振り返った。

ジェイスの表情は読めず、視線は定かでなく、口は堅く閉ざされていた。

「それは、俺の役目だと思います」 落ち着いた言葉。

(中略)

「ラヴニカのために行動するのは、俺の責務です」

 

ジェイスはヴラスカと代わると、アゾールのもとに立ちます。

制度だけが作成され、その創造者が次元を離れたラヴニカは、ギルドパクトの体現者が現われるまで混乱をきたした。

そしてイクサランも同じように、創られた不滅の太陽はこの次元の争いを生み出した。

ジェイスが罪状を述べて行く中、スフィンクスは口を滑らしたように言葉を発します。

「我らが意図は、ニコル・ボーラスを幽閉すること――」

 

その瞬間。

ジェイスの埋まっていなかった最後の記憶が蘇ったのでした。

あの岸辺の時のように、ヴラスカにも流れ出す記憶。

短い映像。

 

ヴラスカにも震えが走りました。

ジェイスも思い出す、いや知っていたのです。

その巨龍を。

彼はアゾールに願い出て、ボーラスに関する記憶を覗き込みました。

少し後に彼が吐いたのは、恐怖による震えた息。

ジェイスは、アゾールの目論見を認めながらも、ギルドパクトの体現者として通告します。

この島を去ることと、今後他の文明に関与しないことを。

ラヴニカの魔術に包まれたスフィンクスは、法魔術の束縛とともに、その場を去ったのでした。

ヴラスカは不滅の太陽を見上げた。今、これをどのような存在として見れば良いだろう?

「何でニコル・ボーラスは、プレインズウォーカーを閉じ込めるアーティファクトを欲しがるんだ?」 彼女は怖れを抑えて尋ねた。

ジェイスは口を固く閉ざしたまま、戦慄とともに彼女を見た。

「ヴラスカさん」 その声は震えていた。「貴女の雇い主が何者か、知って下さい」




今回はここまで

黒幕!明らかになる!!

以前ご紹介した中で、ジェイスを好感したヴラスカは、「記憶を奪った奴を石にしてやりた」いと心情吐露しますが、真実を知った彼女の胸中やいかに…。

 

ちなみに、上でアゾールが述べている「友」とは、他ならぬウギンのことであり、二人(?)はボーラスを倒すべく結託しますが、ウギンはタルキールで返り討ちにあってしまいます。

そのため、この作戦は瓦解し、アゾールは千年もの待ちぼうけを喰らってしまうのでした。

哀れ…アゾリウスの創始者…。

 

さて!次回でイクサランも終局寸前!

ボーラスの思惑を前に、ジェイスとヴラスカの物語ははかなくも美しいエンディングを迎えます!

お楽しみに!

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*出典*

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